學長の部屋|ブログ|―フォアキャスティングとバックキャスティング

投稿者:西日本工業大學 第11代學長 片山憲一


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■Vol.16 2020年5月7日更新

フォアキャスティングとバックキャスティング

5月7日緊急事態宣言が続く中、遠隔授業が始まりました。限られた資源で短期間に遠隔授業を開始するという目標があるためフォアキャスティング手法を使い身近な資源を積み上げて準備しました。厳しい條件の下、前向き思考で準備に取り組まれたPTの先生方には頭が下がります。ワクチンや特効薬がない新型コロナウィルスに対しては緊急事態宣言解除後も感染の広がりを長期的に防ぐため接觸の機會を減らす「新しい生活様式」が必要なことから7月1日まで遠隔授業を継続する予定です。

今回、緊急事態宣言の継続が決定される際、感染者一人が何人に感染させたかを示す「実効再生産數」が用いられ、早期に終息させるには0.5以下の數値を暫く続ける必要性が示されました。0.5を上回ると感染者數の減少が遅れ重癥患者用ベッドが不足して醫療崩壊を起こしたり経済活動の制限が続き倒産が急増したりと出口が見えない狀態が続くことがデータで示されました。

このように狀況を予測しにくい場合には將來の目標を設定して考えるバックキャスティング手法が重要です。まずコロナ禍終結後には希望が持てる未來社會があることを示します。例えば非接觸型社會はポスト情報社會と親和性が高いことからAIやIoTを使えば「新しい生活様式」でも生産性が高く快適な生活が出來ることや新たなビジネスが生まれることを具體的に伝えます。次に〇年△月にワクチンや治療方法を確立し本年〇月までに社會経済活動を昨年比80%まで回復させるなどの目標を立てます。その上で10日間連続して実効再生産數0.5以下になれば経済活動を段階的に解除できるなど明確な數字で示し、「5月末までに解除を実現しましょう」と自粛の協力要請をします。

自粛要請と経済再生というトレードオフの関係にある政策を同時に実行するにはフォアキャスティングとバックキャスティングをうまく使い分けることが鍵になると考えています。

 


 

■Vol.15 2020年4月21日更新

遠隔授業の準備をしながら考えたこと

新型コロナウィルスの感染拡大の「緊急事態宣言」のもと、本學でも5月7日からの授業再開に向け遠隔授業の準備を進めています。大相撲の無観客試合のようなイメージですが、畫面を通じて雙方向でやり取りができるようになっています。実験などには不向きですが、授業に遅れが出ないよう工夫して実施したいと考えています。當初は操作が不慣れなことや學生のリアクションを感じ難いことからぎくしゃくするかもしれませんが、トライアル?アンド?エラーしながら改善していくことにしています。

さて、緊急事態宣言後2週間にもなると「三密」を避けるテレワークを導入する企業も増え通勤電車は日を追って空きが目立つようになりました。観光客に続いてビジネス客も激減しホテルや航空會社の経営危機も伝えられています。飛行機が飛ばないことからも分かるように燃料消費が減り原油価格は安値を付けています。人が動かないだけでこれほどまでに経済に影響が出るのかと認識を新たにしました。

ところで、今回の緊急事態でテレワーク用のハード設備が充実し、在宅勤務者が増えるとITリテラシーも向上するはずで、日本でも予想より早く情報型?非接觸型社會に移行する予感がしてきました。そうするとテレワークをする自宅やサテライトオフィス近くに従來の會社や職場とは違ったコミュニティの形成が必要になるでしょう。例えば自宅近くにテレワーク機器の扱い方の指導やメンテナンスサービスができる電気屋さんの存在とかコメダ珈琲店のような出會いや創造的コミュニケーションを擔う場などです。

いずれにしても電子決済の普及や5Gの提供によるバーチャルリアリティの超高畫質化、AIと連動した醫療の進歩などが確実に進む中で起こった今回の緊急事態は、情報社會の到來を加速することになると考えています。

 


 

■Vol.14 2020年4月6日更新

突然の休み?は、歴史に親しむ

おばせキャンパスは桜が満開です。本來なら新入生を迎えて賑やかな時期ですが、今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で授業開始日が遅れ、桜も寂しそうです。皆さんは突然の休み?に遭遇し、外出自粛の中どうやってこの期間を過ごすのか戸惑っているのではないでしょうか。今という時間は二度と戻って來ません。

私はこの貴重な時間を使って歴史に関する本を読んで欲しいと思っています。例えば、今回の新型コロナウィルスのような感染癥の大流行で世の中がどのように変わったかも歴史から學べます。14世紀の黒死病(ペスト)や1820年頃のコレラ、また1918年に第一次世界大戦を終わらせたとも云われるスペイン風邪などが有名ですが大流行のたびに歴史が大きく動いています。「感染癥?歴史?本」などで検索するとマクニールの「疫病と世界史」や山本太郎の「感染癥と文明」など多くの本が見つかります。長編にチャレンジしたい諸君にはジャレド?ダイアモンドの「銃?病原菌?鉄」がお勧めです。歴史を科學的に理解しようとするアプローチが學校の歴史と全く違った世界に案內してくれます。

また、感染癥とは関係ありませんが、視點を変えて歴史を読み解くという意味で杉山正明著の「遊牧民から見た世界史」は意外性の連続で面白く読めます。學校で學ぶ歴史は文字を持った中國や西歐の視點で書かれていますが、文字を持たずに世界を征服した遊牧民から見た世界史はとても新鮮です。日本史でも、従來の學校の授業とは全く違う視點で書かれた本があります。岡田英広著の「日本史の誕生」や網野善彥著の「日本社會の歴史」です。日本國ではなく日本列島からの視點で日本人とは何かを考えさせてくれます。

4年生は就職活動が優先すると思いますが、過去の歴史を知ると今置かれている環境がよく理解できるようになり、面接時に今までとは違った受け答えが出來るようになるはずです。

 


 

■Vol.13 2020年3月25日更新

自分の身體は価値ある資本!

自分の身體は価値ある資本!
「可動域を広げよ」齋藤孝著(日経プレミアシリーズ)は書店で題名が気になって買い求めた本です。ジョギングが趣味の私は「歩幅を10センチ広げればハーフマラソンで約8分記録が伸ばせる」と考えてストレッチをした経験があったからです。本を開くとイチロー選手が少し高い目標を持つことで進化した実例などを示しながら身體の各部の可動域を拡げられれば今の自分を超えることができることが紹介されます。脳も體と同じで可動域を拡げることで新たな視野が広がり好奇心が湧き新しい出會いが生まれ幸福感をもてると話が進みます。逆に身體が委縮すると思考まで凝り固まり何をやっても面白くなくなるとも書かれています。

まず、現在の自分の可動域がどのくらいあるかを調べるためA-4、1枚に自分の好きなことを20個以上書き出す「偏愛マップ」づくりを勧めています。毎年內容が変化したり數が増えたりしている人は可動域が広がっており、空白が多い人や數が減っている人は可動域が狹くなっている証拠だそうです。

昨今のように変化が激しい時代には可動域を広げておくことがいかに重要かを述べ、その処方箋を紹介していきます。関節を伸ばすような「痛気持ちいい」努力の「積み上げ方式」と違ったことにチャレンジする「飛び石方式」とを組み合わせることによって可動域が広がることを多くの実例で教えてくれます。またどの分野に可動域を広げるか、自分の関心領域を見つけることが重要として「ハブ本(ハブ空港のように要になる本)」の読書術が紹介されています。

さらに時間に対する「思い込み」をリセットすれば可処分時間を格段に増やすことができるとも述べ、最後に逆境に身を置くこと、言い換えれば「苦労は買ってでもする」「どんなオファーも斷らない」少しの勇気が可動域を広げるチャンスと結んでいます。

「可動域を広げよ!」3月20日、卒業生に贈った言葉です。

 


 

■Vol.12 2020年3月10日更新

2021年春に向けた就職活動

新型コロナウィルスの感染予防対策で今月から始まる予定だった2021年3月卒業予定の學生に対する合同企業説明會が殆ど中止になってしまいました。就活のスタートラインで號砲を待っていた諸君は出鼻をくじかれるとともに、どのように行動して企業情報を取ればよいか悩んでいることと思います。

リクルートワークス研究所の調査によると2020年3月の大卒?大學院卒の有効求人倍率は1.83倍と史上二番目の売り手市場だったそうです。ただ従業員規模別に詳しく見ると従業員規模300人未満の中小企業は8.62倍ですが5,000人以上の會社は0.42倍となっていて、大企業は相変わらず狹き門になっている事実があります。その大企業も安泰ではありません。かつて優良企業と言われた家電業界大手もグローバル化の中で多くの分野から撤退し、安定していると思われていた銀行もゼロ金利政策などで大規模なリストラを発表しました。さらに第四次産業革命の進展で10年後には今ある仕事の多くが人工知能やロボットに代替えされるとも言われています。

そのような中、地元の小さな企業でもグローバルニッチトップとして景気に左右されず生き殘っている會社もあります。企業合同説明會というスタートの號砲が鳴らない中、受け身ではなく「何をしたいのか」、「地元で就職するのか」など少し時間をかけて考え、方向性を持って行動を起こすことが重要です。言い換えれば規模の大小や有名企業かどうかで仕事を選ぶのではなく、どこでどんな働き方をしたいのか自分を中心に考えるということです。

コロナウィルス騒ぎで先が見えない中ですが大學では學科ごとに小規模な企業説明會を順次開催しています。早速ギアチェンジして、機會を逃さず行動を起こしてください。そして分からないことは一人で悩まずキャリアセンターや身近な教職員に相談してください。

 


 

■Vol.11 2020年2月28日更新

新型コロナウィルス

中國発の新型コロナウィルスが世界中を席巻し、各國で目に見えないウィルスとの戦いが繰り広げられています。そうした中で各國、各組織の危機管理の違いが浮き彫りになっています。中國人留學生がいる本學では1月末から教職員をはじめ全學生に感染予防について注意喚起をするとともに中國人留學生に対しては春節期間中も帰國しないよう促してきました。2月に入ると危機管理対策本部を立ち上げ、感染予防に関する情報共有とともに想定される事案ごとに実施の有無や行動基準などを決めて予防に取り組んできました。

ところが2月25日に中國人留學生から「中國の親から日本の対応策は生ぬるくて心配だから中國に帰って來るように言われました」と帰國相談が相次ぎました。政府が街の封鎖など徹底した対応をとる中國に比べて日本のクルーズ船対応や自粛要請主體の対策に「日本は大丈夫なのか」と心配が広がっていることが分かりました。
我々の心の中に國の方針はどうかとか、他大學はどうしているかなど指示待ち橫並びの意識がなかったか、また「昔だったらちょっと質の悪い風邪くらいのもの、そのうち収束する」と安易に考えていなかったか考え直すきっかけになりました。

日本では東日本大震災後、BCP(事業継続計畫)が再認識され大規模自然災害などへの対応策はかなり綿密に作られるようになりました。ただ姿が見えないウィルスが一斉に世界に広がりサプライチェーンを分斷し経済活動に大きな影響を與えるということは全く想定していませんでした。今回のような事案にはタイムリーに大膽な対策を実施するトップダウンの危機管理と手洗い、マスク、大勢の人がいるところに行かない等のボトムアップ対策とを連動させていかに社會への影響を最小限にするかという視點が問われています。大學においてもこのことをしっかり胸に刻んで危機管理に當たるつもりです。

 


 

■Vol.10 2020年2月13日更新

待ち受ける「Society5.0」の時代

大學は入學試験や卒業発表という忙しい毎日が続いています。今回は、大學の4年間という短い期間でも世の中が変化する時代を迎えているということをお伝えしたいと思います。

これまで人類は「狩猟社會」「農耕社會」から産業革命による「工業社會」を経てインターネットで世界がつながった「情報社會」へと発展してきました。そして間もなく運用が始まる第5世代移動通信システム(5G)などのデジタル革命をきっかけに人工知能(AI)やモノがインターネットとつながって(IoT)効率的に課題を解決できる「新たな社會(Society5.0)」を迎えようとしています。5Gは高速大容量で多くの端末に接続可能、通信速度も遅延がなく省電力になるそうです。導入されるとビッグデータを自ら解析して學習し続けるAIの進化と相まってサイバー空間が新たな価値を生みだす空間に生まれ変わるのです。技術革新がますますスピードアップし人々の生活が短期間で様変わりする時代になります。そこで政府は、國民がAIに振り回されずその利益を受けられるように「AI戦略2019」を掲げました。その中には「デジタル社會の『読み?書き?そろばん』である『數理?データサイエンス?AI』の基礎など必要な力をすべての國民が育みあらゆる分野で人材が活躍できるようにする」とあります。実際「すべての大學、高専の年間卒業生約50萬人が、初級レベルの數理?データサイエンス?AIを習得」という數値目標も設定されています。この目標を2025年までに実現せよ!とも書かれています。この方針に基づき小中高等學校でもいろいろな取り組みが始まるため、本學でもどのような力がつくのかを明確に示す必要があります。まずは、実踐力となる「データ活用スキル」を身につけるカリキュラムづくりを急ぐことにしています。

注:サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間とを高度に融合させたシステムにより、経済発展と社會課題の解決を両立する人間中心の社會を「Society5.0」と呼んでいます。

 


 

■Vol.9 2020年1月27日更新

役に立つ數學

 

皆さんは小學校の算數で足し算や掛け算九九に始まり、中學では方程式や因數分解を學び、高校では三角関數や対數、微分積分などを學んだはずです。しかし學校では主に試験問題の解き方を習ってきたため、実社會でどのように役に立つのかわからないと感じている人が多いと思います。実際日常生活では數學が出來ないから困るということは滅多にありません。また、高校では文系、理系の振り分けがあり數學が苦手な人は文系にという流れから高校時代に「數學は捨てた!」という人が多いかもしれません。

群馬大學名譽教授の齋藤三郎先生は「數學は関係を研究する學問」で「世界を理解し表現するには數學が必要」と述べておられます。実際、大學では文系でも數學を使う場面が多々あり、早稲田大學政治経済學部が2021年度入試から數學を必須にするというニュースが話題になりました。昨今AIやIoTの時代を迎えて取り扱う情報量が増え、文系?理系関係なく「役に立つ數學」を理解できない人材は通用しない時代になりつつあります。

そこで今回は學校で習う數學と世の中で役立つ數學とを結びつけてくれる本を紹介したいと思います。西成活裕著「とんでもなく役に立つ數學」(角川ソフィア文庫)です。著者が都立三田高校の生徒に行った「數學嫌いを吹き飛ばす特別授業」を本にしたもので數式はあまり出てきません。同著者の「とんでもなくおもしろい仕事に役立つ數學」(同)もお薦めです。自稱文系の人は牟田淳著「アートのための數學」「デザインのための數學」(いずれもオーム社)を合わせて読むと數學が身近になると思います。

學校で習った數學が実際の場面でどのように使われているかを知ることで、嫌いな?數學を見る目が変わります。世界でも難しいと言われているひらがな、カタカナ、漢字が交ざる日本語を使いこなしている皆さんにとって「役に立つ數學」を自分のものにすることはそれほど難しくないはずです。

 


 

■Vol.8 2020年1月16日更新

日本は世界から取り殘される!?

 

NHKニュース(1月14日)のビジネス特集で、ラスベガスで開かれている最新テクノロジー見本市(CES2020)が表記ヘッドラインで取り上げられました。參加企業4,500社のうち中國企業が1,000社、韓國が300社、フランスが250社出展しているのに対し日本は70社しか參加していないことが報道されました。その中でアメリカの投資家ワイシスク氏が「日本から出展された製品に突出して魅力的なものはなかった」と語っています。また日本はこれまで技術に焦點を當ててきたが、スタートアップ企業がグローバル展開して規模を大きくするには、(1)市場に合った製品をタイムリーに投入するマーケティング力 (2)どういう課題を解決できるのかを一言で説明できるプレゼンテーション能力 (3)リスクを恐れない力強い起業家精神という全く違うスキルが必要だと指摘していました。

私はこのニュースを見て、世界から取り殘されないためには多様性が重要なカギを握っていると感じました。世界では今何が必要とされているのかを知り、自ら開発した製品がそれに応えられると一言で伝えるには、異文化交流の実體験がないと無理だと直感したからです。島國の日本で異文化を理解するのは至難の業です。日本人は今でも「性能が良くて安価なものは売れる」という神話を信じているのではないでしょうか。また失敗しても再チャレンジできる実態を見ることが少ない日本では起業家精神は育ちにくいと思います。

21世紀に入り世界は機能性や効率を優先するアプローチから性別、國籍、宗教などを越えて人間を幸福にするという切り口に変わってきています。シリコンバレーで従來の理數系を重視したSTEM教育にARTを加え創造力を育み共感を大切にするSTEAM教育へと進化したのもそのためだと思います。昨今、ビジットジャパンの取り組みやLCCの伸長で外國人観光客が増えていることに加え「トビタテ!留學JAPAN」の充実などで外國への壁は低くなったと感じています。若い皆さんが積極的に海外に出かけて異文化を體験し多様な考えや価値観を共有できる人材になることが將來の日本企業を創造する近道だと信じています。

注)STEM:S: Science, T: Technology, E: Engineering, M: Mathematics

 


 

■Vol.7 2020年1月6日更新

明けましておめでとうございます

 

年末に起きたカルロスゴーン氏のレバノンへの逃走劇のニュースを聞いて常識にとらわれていると想定外のことが容易に起きることを実感しました。15億円もの保釈金に加え日本の厳しい出入國管理體制を考えると、よもや國外脫出を企てることはないだろうという思い込みが見事に裏切られたからです。

また昨年暮れ、2019年に生まれた赤ちゃんの數が予想より2年早く90萬人を割り込み86.4萬人で終わるというニュースにショックを受けました。將來人口は確実に予測できるため、生まれてくる子どもの數も予想どおりになると考えていたからです。2001年生まれのミレニアムベビーが117.1萬人だったことからこの間に31萬人弱減少したことになります。將來の大學進學率が昨年の54.7%から60%にアップすると仮定しても18年後の大學進學者數は現狀より10萬人以上減少することになるのです。

一方、AI時代を支える情報分野で5Gが登場し技術革新のスピードが益々速くなることが予想されています。地球環境では大規模な山火事や世界中で頻発する風水害に象徴される地球溫暖化問題が顕在化しています。また本日の日経ビジネス電子版は世界中が自國第一主義の傾向を強め米中貿易摩擦の長期化やイランとアメリカの関係悪化、ブレグジットなどの政治問題が山積し「來年のことさえ定かではない」不確実な時代になると予想しています。

このような情報過多の時代には目の前にある情報は本當に真実なのか? 思い込みを無くして疑い、多面的な情報を集めてフェイクニュースに惑わされない自ら考え行動できる人材であることが求められます。今回は自ら考え行動できる人材の第一歩となる多様な視點からの考え方を伝授する苅谷剛彥著「知的複眼思考法」(講談社)を紹介します。複眼思考により情報リテラシーを格段に高めることができ考える力がつくと説いています。

西日本工業大學は自立できる人材の育成に重點を置き「選ばれる大學」の実現に向け地道に取り組んでいます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

 


 

■Vol.6 2019年12月26日更新

年末年始にお薦めの本(現実を正しく見る)

 

私は戦後の経済成長の一面を象徴する異臭を放つ川や煙突から立ち上る7色の煙を見て育ちました。大人になってからは公害克服の過程やその後の経済繁栄、バブル崩壊を経験しました。そして今は地球溫暖化や少子高齢化といった新たな課題の中でAIやIoTが話題になる時代に生きています。これまで歳をとることは山登りに似ていて登れば登るほどに息切れは激しくなるが視界は広がって世の中がよく見えるようになると確信していました。ところが今年、ロスリング親子が書いた「FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」(日経BP社)を読んで考えが少し変わりました。本の中で紹介されている13問の簡単な三択問題に5問しか正解できなかったからです。例えば、「自然災害で毎年亡くなっている人の數は過去100年でどう変化したでしょう? (1)2倍以上になった (2)あまり変わっていない (3)半分以下になった」の質問に不正解でした。これは、地球溫暖化で異常気象が頻発し大きな災害が増えていると思い込んでいたためでした。この本によると正解數が5問というのはチンパンジー並みらしいです。自分としては日頃から最新データをアップデートしていると考えていただけにショックでした。読み進んでいくと、どうしてそのような間違った思い込みをしてしまうのか、また間違わないためにはどうすればよいかが原因となる10個の本能別に解説されていてとても參考になりました。一読の価値ありです。

もう一冊は、河合雅司著「未來の年表~人口減少日本でこれから起きること~」(講談社現代新書)です。少子高齢化が続く日本でこれから確実に起こることを、図表を交えて年表形式で分かりやすく示しています。例えば2033年には「全國にある住宅の3戸に1戸が空き家になる」ことが書かれています。悲観的な未來は見たくないという気持ちもありますが、人口減少という現実に我々一人一人が正面から向き合って豊かさを実現させるためにもぜひ読んでおいて欲しい本です。

 


 

■Vol.5 2019年12月16日更新

新幹線で考える総合システム工學科

 

技術を使って「思い」を形にするのが工學です。今回は、多くの人を速く安全に目的地へ運びたいという「思い」を形にした新幹線を考えてみましょう。

新幹線構想を実現する場合はまず、利用者數を予測して規模やルートを計畫します。その上でトンネルや橋梁などの構造物の費用を見積もり、経済的に収支が成り立つと判斷されて初めて事業化されます。この計畫から地元調整や官公庁との折衝も含め線路を敷設するまでのインフラ整備を行う仕事は主に土木工學系の人が行っています。

車両づくりは機械工學系の人たちの仕事です。條件を満たす速度で走るのに最適な流線型の形狀を決めたり揺れを少なくする臺車の構造を検討したりして、期限內に安全に速く走れる車両づくりに取り組みます。軽くて強い材料を経済的な観點から選定するのも重要な仕事です。

電気情報工學系の人は省エネを意識しながら速く走るためのモーターづくりや高圧電力を安全に取り扱う仕組みをなど考えます。また、何かトラブルが生じても安全に運行できるようセンサーなどで監視し異常を見つけると自動的に速度を落としたり止めたりする自動列車制御裝置(ATC)などを擔當します。そして、これらの異なった部門が協力してより安全性を高め、いかに乗り心地を向上させるか、設備を長持ちさせるか等について検討を重ねます。新幹線というシステムの最適解は各部門の最適解の足し合わせとは限らないからです。例えば先頭車両の鼻が長くなっているのはトンネル出口の騒音対策のためです。総合システム工學科という名前にはシステム全體を理解したうえで自分が擔當するセクションの仕事を考えることが出來る人材を育てたいという思いが込められているのです。

加えてお客さんを迎える駅づくりを擔うのは主に建築學科の人です。また利用者増や駅ビル店舗の販促などは情報デザイン學科と親和性が高い仕事です。新幹線という事例一つを見ても総合的に考えることがいかに重要か理解できると思います。

 


 

■Vol.4 2019年12月5日更新

「工學とデザインの融合」と産學連攜協定

 

西日本工業大學にはデザイン學部があります。皆さんはデザインと聞いて何を思い浮かべますか。ポスターやホームページ、キャラクターなどの商業デザインですか? それとも攜帯電話や車などの工業デザインでしょうか? はたまた、國立競技場や門司港レトロといった建築デザインでしょうか? いずれも表現された色や形を思い浮かべると思います。一方、キャリアデザインや食のデザインといった言葉もあります。昨今は思いもよらないものもデザインと呼ばれています。11月29日、小倉キャンパスで「北九州デザインシンポジウム2019~今、あるものを結ぶデザインとは~」が開催され、特定非営利活動法人おてらおやつクラブ理事の福井さんと監事の桂さんからクラブの活動紹介がありました。この活動は、お寺へのさまざまなお供えを仏さまからのおさがりとして頂き、子どもを支援する団體と協力して、貧困な子どもたちにおすそ分けするもので「2018年グッドデザイン賞」の大賞を受賞しました。このようにデザインには多様性がありますが、共通しているのは、課題を解決する方法を「可視化」するという點だと思います。

本學はこのデザインと技術を使って思いを「形」にする工學とを組み合わせれば新たなマーケットが生み出せると考え「工學とデザインとの融合」を掲げています。例えば、ネジチョコで話題の洋菓子屋「グランダジュール」さんと本學とはこれまでもお菓子の型づくりやパッケージデザインなどで協力してきましたが、本日新たに産學連攜協定を結びました。新たな連攜コンセプトはEmotional dessert「気持ちを揺さぶるお菓子」づくりです。グランダジュールさんの職人技に大學の知恵や技術を合わせて購入意欲をくすぐる新商品を開発しようというものです。その過程で「可視化」の基礎を學んだ學生がお菓子の企畫開発やマーケッティングを體験します。このような取り組みから本學が目指す「自ら考え行動する技術者」を育成したいと考えています。

グランダジュールとの連攜グランダジュールとの連攜

寫真左から:グランダジュールとのコラボで完成した商品、産學連攜協定締結式

 


 

■Vol.3 2019年11月25日更新

ギラヴァンツの快進撃は基礎力の鍛え直しから

 

昨日、地元サッカーチームのギラヴァンツ北九州がカマタマーレ讃岐に4-0で勝ち、來シーズンのJ2昇格を決めました。フル出場の選手が試合終了まで當たり負けせずに走り切り、黃色のフラッグと応援のうねりは止むことがありませんでした。2018年の昨シーズンは17位と最下位でした。今シーズンの躍進は今年から指揮を執った小林伸二監督の指導の成果だと実感しています。著任そうそう成績低迷は基礎體力不足と見抜いた監督は、選手の心拍數などを計測する機器を導入し徹底的に走り込ませるなどフィジカル強化に取り組みました。選手たちには面白くないハードな練習が続きましたが、體脂肪率が練習とともに目に見えて下がり、息切れせずに1時間走れるようになったのです。體力に自信がついてくると試合の流れが見えるようになり、ボールへの執念がキープ率上昇という形になって表れてきました。相手チームとの體力差が勝利につながっていると確信できたのです。

大學における「學修の成果」も學ぶ學生の基礎力次第で格段に違ってきます。大學で學ぶ上での基礎力とは何でしょうか?私は、昔から言われている「読み書き算盤(そろばん)」が現代にも生きていると思っています。すなわち文章を読むこと、內容を理解して文章を書くこと、そして計算できる能力を持っていることです。前回、文章力の重要性について觸れました。今回は計算する力についてです。小林監督が選手たちをきちんと指導できたのは、根拠となる數字があったからです。一定の練習をして負荷をかけるごとに心拍數や血圧を測り記録させます。練習を続けると數値の上がり方が減り、疲れを感じなくなりフィジカルが強化されていくのをデータとともに実感できます。データというエビデンス(証拠)があったからこそ選手たちの能力も向上したのです。西日本工業大學で學ぶ皆さんには計算する能力、特にこれからはデータサイエンスは不可欠です。「算盤」に少し不安がある學生は、近くの數學の先生に一聲かけてください、學びなおしの方法を伝授してくれるはずです。

 


 

■Vol.2 2019年11月5日更新

大學時代に身に付けて欲しい文章力

 

私は大學卒業後、技術者として北九州市役所に就職、35歳以降は事務的な仕事が主で退職後は北九州エアターミナル㈱、本學と異なる分野で仕事をしてきました。どの分野でも「仕事の肝」は文章を書くことだと気づきました。仕事をする場合まず、仕事の內容を上司や関係者に説明する「起案書」(民間では企畫書)作りから始まります。大體A-4で1枚、800字程度にまとめます。仕事に要する予算や緊急度、効果など判斷に必要な項目を簡潔な文章で的確に伝えなければなりません。重要性が伝わらないとゴーサインが出ないからです。また仕事の途中、文章で問い合わせをしたり、回答したりします。結果も報告書という形で提出し、これらの文章で評価もされます。そこで私は學生時代に身に付けて欲しい能力の第一に文章作成能力を掲げます。

さて、文章を書くということは自分の考えなどを他人に伝えるアウトプット行為でもあり、インプット行為でもあります。文章を作成するには伝えたい情報が必要で、情報を得るには勉強や體験、取材といったインプット活動が不可欠です。授業以外のボランティアやインターンシップに參加を奨勵するのもそのためです。そこで文章力をつけるためまず取り組んで欲しいことは、中身のある優れた文章に數多く觸れることです。例えば必要な情報をコンパクトにまとめている新聞はとても良い教材です。毎日読むことで世の中の仕組みや経済の動向が自然に身に付くからです。新聞はハードルが高い、苦手という人は、名著と呼ばれている作品の中から興味のある本を選べばよいと思います。ここで重要な點は読んだ後に簡単な要約や100字程度の感想文を書くということです。私は大學1年の夏、待ち合わせの本屋で偶然見つけた井上靖の「蒼き狼」を手に取って以來、彼の本に夢中になりました。何をするにもきっかけが重要です。時間を作って図書館や書店を覗いて気になる本を探してみてください。文章力と読書についてはこれからも折に觸れて取り上げたいと思っています。また大學でもどのように文章力を養うか真剣に考えたいと思います。

 


 

■Vol.1 2019年10月17日更新

學長になって半年

 

研究や教育に攜わったことのなかった門外漢の私が、學長に就任して半年が経ちました。日本の18歳人口が確実に減少する中、その影響が大きい地方の私立大學が存続するのは容易ではないことを改めて実感しています。と同時に地域の將來を考える「知」の拠點として、地方の存続には大學の存在が不可欠であるとの思いを強くしています。それはマーケットが小さい地方の大學経営を考えている際に、以前読んだ富山和彥著の「なぜローカル経済から日本は蘇るのか」を思い出したからです。大企業vs中小企業という従來の視點をグローバル企業とローカル企業という視點で捉えなおすと、日本経済の危機を救うのは地方企業の生産性の向上であることが見えてくる點です。

今大學も大きな変革が求められていますがどのような視點で取り組むのかがとても重要と感じています。時代や場所によってその視點や解決策は異なるはずです。地域から必要とされる大學として存続するため、グローカルな視點で考え、チャレンジを続けたいと思っています。

 

これから折に觸れて、學長の部屋を通じて情報発信していきます。初回である今回は、私の経歴や思考方法について知ってもらうため、昨年(公財)アジア成長研究所所報「東アジアの風」に寄稿した小論「北九州空港を活用した地域経営」を紹介します。アクセスしてご覧ください。


 

[関連情報]

學長挨拶

 

 

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